発酵と土壌の国際フォーラムへ
先週末は「生きている土と微生物と共に生きる ~Living Soil, Living Food 発酵と土壌の国際フォーラム ~」へ。
まずは主催者である、石坂産業㈱代表 石坂典子さんからのご挨拶。
石坂産業㈱は、創業以来、産業廃棄物やごみを価値ある資源に生まれ変わらせ「循環型経済」を生み出すため、ごみの再資源化はもちろん、ものづくりの段階から「ごみにしない」ことを視野に入れ、循環の中で自然と美しく生きる暮らしの提案に取り組まれています。
そして、里山の自然と伝統文化の継承、未来につないでいく場所として運営されている三富今昔村。この機会に息子と訪れましたが本当に素敵な場所でした。https://santome-community.com/about/
この三芳町の辺りは江戸時代に人口増加した市民の食糧確保のために屋敷と林をセットで開発、枯れ葉を発酵させた土で美味しい野菜を作る「武蔵野の落ち葉堆肥農法」は、日本農業遺産に認定されたとのこと。食糧の安全保障はもちろん、先人たちが残した技術を後世へ残す、素晴らしい取組みをされていることを埼玉県三芳町 林伊佐雄町長よりお話くださいました。
その後、北里大学名誉教授 陽 捷行さんによる基調講演「微生物が育む土壌とわたしたちの健康」では、
土壌の微生物の数と大腸の微生物の数はだいたい同じであり、土と腸、脳、微生物は密接に関係していること、
スプーン1杯の土壌には、億を超える微生物が存在し、地球環境と全生命を守っていること、
「18cmの奇跡」をいう本も出版されていますが、約13,000kmある地球の直径に対し、人類が生きるための土壌は18cmしかないこと等々お話され、
豊かな土壌が豊かな命と健康と育み、土を守っていくことの重要さを改めて実感しました。
続いて、大正12年に創業され100周年を迎える弓削多醤油(株)4代目の弓削多 洋一さんより
先祖代々守られてきた製造方法での醤油つくりの様子についてお話。
高さ2m30cmもある桶を使うそうですが、100年持つので作れる職人が減ってしまい、また桶職人を増やす取組をされているそうです。
国産丸大豆と国産小麦を使い、種麹から発酵をさせているが、農薬化学肥料を使っていないと発酵のすすみが良く、桶は勝手に発酵が進み、蔵の中にも様々な菌が住んでいるので味に深みが出る。地域ごとの気候にあった菌が住み、蔵により味が違う一方で、大量生産されるタンクは菌を入れなければ発酵せず、菌を1種類づつ入れて発酵させるので半年でできあがるが、味は淡白なのだそうです。
また、イタリア、フランス、日本、東南アジアの人々が比較的耐性が強いのは、発酵食品を食べているからではとの順天堂大学での研究があること等、樽の中で大豆と麹が生き物のように動きながら発酵していく様子を動画で見ながら醤油作りについてご説明くださいました。
その後は、斎藤由佳子さんのファシリテートによる、イタリアで最も著名な発酵食専門家である発酵マエストロのカルロ氏と弓削多さんとのディスカッション。
カルロ氏は、子どもの頃から発酵に興味があり、自分でヨーグルトやパンを作っていたそうですが、地元にあるもの(ひよこ豆やヘーゼルナッツ等)だけを使い、醤油や味噌を作っているそうです。この後の交流会で味見をさせていただきましたが、お刺身やお味噌汁を味わいたくなるほどの再現性には驚きました。
自分に正直になり、信じることをやり、自分が納得するものでなければ、出さない。
ものづくりへの想いには弓削多さんと共通するものがあり、国を越えた職人たちのこだわりに希望を見出しました。
交流会では、埼玉県内の発酵食や発酵飲料、発酵食品の生産者さんや、発酵や農業、食の専門家の方々とお会いすることができました。
イタリア在住、日本とイタリアを拠点に食文化教育を行う「株式会社GEN Japan」代表であり、土の力と循環型産業で人間を含むあらゆる生態系の回復へと取り組む「土壌コンソーシアムJINOWA」を設立された斎藤由佳子さんにやっとお会いできたことはもちろん、
食環境ジャーナリストであり、農水省学校給食等地場食材利用拡大委員会委員もされている金丸弘美さんや、
日本におけるスローフード運動の先駆者である島村菜津さん(この半年で3度目でした!)など、
地域創生と食文化をまもる活動をされていらっしゃる方々とお会いでき大変光栄でした。
土と繋がる食べ物たちの味見もさせていただきましたが、どれも発酵を駆使した甘味や酸味で味わい深く、本当に美しかったです。
土壌の再生、地域での経済循環、微生物の力を利用した発酵食。
これからの地域や食文化の発展と私達の命を守る鍵はここにあると感じています。
大変貴重な機会をいただきました斎藤由佳子さんには、本当にありがとうございました。